昔、竹取の翁(おきな=おじいさん)と呼ばれるライチュウがいた。
野山に分け入って竹をとっては、いろいろなことに使っていた。
ある日翁はいつものように竹林に入った。
「さて、今日はどれくらいの収穫があるだろうか……おや?」
翁の視線の先には根本の光る竹が1本あった。
不思議に思って近寄ってみると、筒の中が光っている。翁は早速竹を切ろうとした。
かきぃぃぃぃん……
「切れない。この斧は古いからな」
そう言いつつ真新しい斧を構え、振った。
がきぃぃぃぃぃぃぃん……
「何か不吉な音が……ああっ、やっぱり欠けてる!」
ぜいぜい言いながら次の作戦を考える翁。
「斧では切れないのか? じゃあこれなら……」
翁は目を閉じた。最近感覚の鈍ってきた電気袋に、若い頃を思い出させるあの感触が走る。
どっかーーーーーーん!!
雷を落としたらしい。そこには黒こげになった竹があった。
でも光っている部分だけはなぜか無傷。
翁はもう一度竹を切ろうとして、いつもの斧を取った。
みしみしみし……
「わああぁぁぁっ!!」
次の瞬間、なんと竹の方が勝手に倒れてきた。翁はあわてて逃げたので潰されずにすんだが。
「こんな不思議な竹って初めてだな」
今度こそ竹の中をのぞき込むと、とても小さなピンク色の玉が入っていた。
よく見るとまん丸な目と小さな手がついている。
要するに“ププリン”というポケモンである。
とにかくそのププリンが、まことにかわいらしい様子で座っていた。
翁が言うには、
「私が毎日見る竹の中にいらっしゃるので分かりました。あなたは私の子になられる方なのでしょう」
ププリンを拝むような口調でそう言って、竹と一緒に抱えて家へ持ち帰った。
翁はその子を妻の媼(おうな=おばあさん)……ピカチュウに預けた。
「この子は一体どこで……」
「私たちには長いこと子供がいなかった。
だから神様が私たちの願いを聞き入れてこの子を授けてくださったのだろう」
考えた末2人で育てることにした。ピチューではなくププリンなのだが、2人は気にしなかった。
それに、その子の可愛いことと言ったらこの上ない。
まん丸な体で家中を跳ね回る様子は、何ともほほえましいように思えた。
翁はこの子を見つけてから、竹をとる際に節の間に黄金を見つける事が多くなった。
そうして翁はだんだん豊かになっていった。
「おかしいな……確かここにいると聞いたのに……」
ププリンはすくすくと育ち、3ヶ月ほどでプリンに進化した。
この子がすっかり大きくなったので、翁は娘に名前を付けようと思い、近くの社(やしろ)の神主に名付け親を頼もうと決めた。
しかし社に行ってみると、神主らしき人がいない。翁は何度かこの社に来たことはあったが、神主に会ったことはなかった。
「おや……何だ、この像は? 鳥のようにも見えるが。
それにしても少々悪趣味な感じが……」
「誰が悪趣味だと?」
「!?」
建物の奥に安置された像がいきなりしゃべった。実は像に見えた物が神主のネイティオだったのだ。
「娘の名付け親を私に頼みたいのだろう?」
「なぜ分かったんだ!?」
「まずは娘がどんな者であるか、君の口から聞かせてくれないか」
「はあ……」
翁は説明を始めた。少々大げさに。
この子の姿の華やかに美しいことは世間に類がなく、またその歌声も美しかった。
最後まで聞けずにどうしても眠ってしまうのを悔やむほどであった。
翁の気分が悪く苦しいときも、この子を見ればすぐによくなった。
腹立たしいことも紛れて気が晴れ晴れするのだった。
「そうか……光る竹より生まれた不思議な子供、というのは聞いていたが、そんなに立派に育ったのか。
いいだろう。彼女に『なよ竹のかぐや姫』と名づけるがよい」
「そうですか。ありがとう、あの子にはふさわしい名前だ」
翁は意気揚々と出ていった。
「かぐや姫……本来我々は……地上の者は触れぬべき存在。
翁は姫のことで苦しむことになる……しかしそれを言わない方が彼にとって幸せなのか、それとも……」
残されたネイティオは1人つぶやいた。翁と応対した姿勢のまま、全く動かずに。